シカゴ郊外のオークパークに、フランク・ロイド・ライトの家とスタジオがある。ヘミングウェイの生家から、ほんの15分ほど歩いた所だ。(太字リンクしてます)
東京の銀杏がきれいな黄色に変わると、あのライトの家の前にあった大きな銀杏の木を思い出す。それはそれは立派な木なのだ。
訪ねたのは3年前の9月だ。確か30分毎にスタジオ見学ツアーが行われており、私は午後のグループに混じって、ガイドの説明を聞いた。F.L.ライトの意匠がふんだんにほどこされた食堂、ピアノが壁に半分埋まった子供部屋、、自宅は後にプレーリー・スタイルと呼ばれる建築の最も初期の作品だ。
庭に出てスタジオへ移動する時、ガイドが頭上に枝を広げる銀杏の大木を示し、
「このginko tree(銀杏の木)はこの辺では珍しいもので、F.L.ライトが遠くから取り寄せたのですが、秋には、おぞましい匂いの実がなります、とても臭い」
と、さもいやそうな顔で説明した。
「あのー、その中身はおいしいの。私たち日本人は好んで食べます」
という言葉が口から出かかったが、興味がなさそうな顔で木を見上げている見学者たちを見回し、何も言わないことにした。
考えてみれば、茶碗蒸しの底にひっそりうずくまる銀杏は好きだが、特に拾い集めたり買い求めたりするほどでもない。
が、以来、ginkoという名詞は私の中でF.L.ライトの銀杏になった。この季節になると、黄色い葉があの重厚な焦げ茶色の建物をさらに引き立てていることだろうと思う。匂いはともかくとして。
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